「山の天気って変わりやすいんだねー…」

後部座席でぐったりとした がそう呟いた。
「…暑ぃ。」
「暑いーーっ!!」
の両脇にも、争う気力もないほど脱力した悟浄と悟空がぐったりとしていた。
「後少しで街に着くと思うので、我慢してくださいね。」
「…」
笑顔でそう言う八戒の額からも、じわりと汗が滲み出ている。
三蔵にいたっては喋る気も起きないようだ。

昨日までは雨がずっと降り続いていた。
それもじとじととした、しつこい霧雨。
けれど今日は憎らしいほどの青空と太陽の光が5人を照らす。
これには全員が参っていた。

「お風呂入りたいなー…こんな汗かいちゃって」
「アレ? ちゃんは風呂入ってもその後三蔵様とベッドの上でまた汗かくんでしょ?」
「ばっ…!!」
顔を真っ赤にした のぐったりとした体が飛跳ねるように起き上がった瞬間、悟浄と の間を銃弾が走り抜けた。
悟浄は恐る恐る運転席の隣に座っている、不機嫌モロのその顔を見た。
「…てめぇ、殺すぞ」
「…ハーイ…スミマセン…」
悟浄が身を縮めると、三蔵は銃をしまい、座りなおした。
はため息を1つついて、またぐったりとした元の体勢に戻る。
「もうすぐ着きますからね、三蔵」
「フン」
八戒の言葉が合図になってように、遠くの方に街が見えてきた。
































「ずいぶんと繁盛している宿ですね…」
八戒の言うとおり、三蔵たちの来た宿は、旅行客やら街の人やらがわらわらと来ていた。
「ここは温泉が有名だからね〜。大浴場があるんですよ。どうです?お客さんたちも入られては?」
宿のおばさんがにこにこしながらそう言った。
「温泉か…」
三蔵が敏感に反応。
入浴好きの三蔵としては、ありがたい。
「だいよくじょうって?」
「でっけー風呂のことだよ、泳げっぞ、猿」
「でっけー風呂!?」
猿と呼ばれたことなんかすっかり忘れ、悟浄のその言葉に悟空は目を輝かせた。
「どうします?今から行きますか?」
「うん!私すぐに入りたい。すっごい汗かいてるし」
の一言で、一行は大浴場に向かった。






「混浴!?」

真っ先に声をあげたのは である。

混浴なんて冗談じゃない。
しかもこんなに人がたくさん来ている中、人前で裸になんかなれるか!

が硬直していると、他の4人は冷静に着替えの準備を始めた。
「まーまー、いーじゃねえの。タオルつけりゃすむことだろ?」

そーゆー問題じゃないでしょ!

「やましい気持ちなんてありませんし、他にもお客はたくさんいますし」

八戒までっ!!

、でっけー風呂だぜ!?」

悟空はなんにもわかっちゃいない!!

「…まさかこういうオチだとは思わなかったわ…」
「オチって…」
はあ、っと深くため息をつく に、三蔵が近づいた。
「お前は部屋に戻れ。」
「三蔵…」
「それにな」
三蔵は の耳元に顔を近づけ、静かに囁いた。

『お前の体を他の男に見せるわけにはいかねえからな』

途端に の頬が赤く染まる。
いち早くそれに気づいた悟浄は、にやっと笑って三蔵を見た。
「まーた、三蔵サマってば優しいんだから」
「そんなに殺されてぇか?」
脱衣場にハリセンの音が響く前に、 はそそくさとその場を離れた。
































今日は1人部屋の は、ゆっくりとベッドに転がって本を読んでいた。
気が付けばもう外は暗くなっていて、ドアの向こうで人が通る気配もなくなる。
は本を閉じ、ベッドから起き上がった。

部屋に備え付けのシャワーを浴びたとはいえ、やっぱり久しぶりにゆっくりと湯船につかりたい。
もう遅い時間だ。
お風呂に入っている人はいないだろう。

は着替えを取り出し、部屋を出ようとした。
そのとき、ノックもなしにドアがひとりでに開いた。
不思議に思いこちらからドアを全開にすると、向こうに立っていたのは三蔵だった。
それに は少しほっとする。
「もう…ノックくらいしてよね」
「いつもしねえだろうが」
「…そりゃそうだけど…」
三蔵はそのままなにも言わずに、 の手を引いた。
「ちょ…どうしたの?」
「行くぞ。」
「え?」
「温泉だ。」
にやりと三蔵が を見て笑う。
「ちょっとぉ!三蔵と!?」
は引かれる手に逆らうことができず、そのまま三蔵と大浴場に向かうはめになった。






「誰もいねえな」
「はあ…(三蔵がいるんですけど)」
三蔵は脱衣カゴに着替えを入れ、着々と法衣を脱ぎ始める。
「…三蔵…ほんとに入るの?」
「当たり前だ」
「私、恥ずかしいって…」
「今さら照れることねえだろ」
三蔵の言葉と瞳に、 はなにも言えなくなる。

確かにお互いの体を見るのは初めてじゃないけれど、
こうして明るいところで向き合うのは慣れていない。

タオルを腰に巻いただけの格好になった三蔵は、赤くなって俯いている に近づく。
そしてそのまま の上着を脱がした。
「さんぞ…っ」
「俺が風邪ひく。早く脱げ。」
「…」
はもう仕方ないと、いそいそと服を脱ぎ始めた。
けれどやっぱりその間三蔵の顔を見れない。
脱ぎ終わると、すぐにタオルを巻いて2人で浴場へと向かった。



「わ…おっきー…」
が目にしたのは、今までの宿の中では見たことのないくらい大きな浴場だった。
露天風呂ではないが、壁の一部がガラス張りで、外の景色がよく見える。
「入るか」
「うん!」
嬉しそうな の顔に、三蔵も自然と笑みがこぼれそうになる。

「あー気持ちいいー…」

とっぷりと湯船につかった は、足を伸ばしてくつろぐ。
こんなにゆっくり入浴するのは久しぶり。
三蔵が隣にいることも、この温泉の気持ちよさのおかげで、だんだん恥ずかしさが消えていく。

「外見ろ、
「…わぁ…」
三蔵に促されてガラス張りの壁の向こうを見ると、真っ黒な夜空が見え、その中に銀色に輝く星が散りばめられていた。
「きれい…」
ため息と一緒に言葉が漏れた。
微笑を浮かべながら食い入るように夜空を見る の横顔を、三蔵はじっと見つめた。

お前のほうがよっぽどきれいだ。

そんな悟浄のような台詞が三蔵の頭に浮かんだが、口には出さなかった。

「なに?」
こちらを向いた の顔を、三蔵は一瞬でとらえた。
不意打ちをつくように、その唇に優しく口付ける。
「ん…っ三蔵!こんなとこで…」
「誰もこねえよ」
「そういう問題じゃ…っんん…」
三蔵は有無を言わさず の唇にくらいついた。
露出した肩を抱き寄せる。
抵抗していた も、三蔵のキスにすぐおとなしくなった。

「…三蔵…」
唇を離すと、頬が火照って赤く染まった の顔が三蔵の目に入る。
風呂場にいるせいか、目が少し潤んでいる。
「てめえ誘ってんのか?」
「さ、さんぞ…!?」
三蔵の口元がにやりと笑ったのと同時に、その右手が のタオルの継ぎ目にかかる。
「ちょっと!やだよ、こんなとこで…!」
「いちいち部屋に戻ってするよりいいだろ」
そう言って三蔵はもう一度 に口付けた。
「…さんぞ…」
「なんだ」
「…やさしくね」
顔が熱くなるのを悟られないように、三蔵はすぐに の首筋に顔を埋めた。

山の天気が変わりやすいことに、三蔵はこのときだけ感謝した。












































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10000hitフリー配布夢です。
三蔵が変態になってますが、
それでもよろしかったらお持ち帰りくださいませ。

 

 

 

愛さんのサイトから拉致った10000hitの夢小説です。
フリーと言う事だったので拉致りました!!
三蔵様の手の速さにニヤニヤ…
腐女子は只只ニヤニヤ…
愛さんの書かれる夢はいつ見ても素敵です!!