<仲秋の名月>














満月が輝き辺りを月明かりで照らす。
暗くて寒い闇を明るく照らす。















「今日は満月だね」

八戒の誕生日の2日前に今年は仲秋の名月は訪れた。
赤く輝く月は大きい。

「綺麗ですね」

隣には八戒がいて高い空には月が登る。

「でもあたしは十六夜が好きかなぁ」

十五夜ではなく十六夜を選んだ。

「どうしてですか?」

普通に考えると大抵の人は十六夜ではなく十五夜を選ぶだろう。

「満ちた後の月だから」

確かにそうだが好きな理由とは違っている。

「又欠けてから満ちるって事じゃん」

窓の外を眺めて眩しい位の月を見た。

「満月も好きだよ?けど十六夜が1番なの」

どの月よりも十六夜が好きだとは言った。

らしいですね」

欠けては満ちて、満ちては欠けて。
長い年月を経て繰り返される営み。
その中でも欠けて行き輝く月を愛でる。

「そう?」

と言う人はそんな性格だ。
人とは違った自分の価値観を持ち、それを誇りに思い胸を張る。

「えぇとても」

聞いている側が微笑ましくなるくらいに。



















「八戒も好きよ」

自分の誕生日を良く思わないであろう八戒に向かい微笑む。

「例えばそれが辛くて嫌な事ばかりでも、あたしは出逢ってくれてありがとうって八戒に言うから」

驚いてを見下ろすとは八戒の手と自分の手を重ねた。


















「ちょっと早いけどお誕生日…『ありがとう』」

そう言っては八戒の手を握った。

「『ありがとう』ですか?」

「そ、『ありがとう』」

誕生日は生まれて来た記念の日。
大切な特別な日。













「生まれて来た八戒への感謝の日でしょ?」

「ありがとう…ございます」

八戒に感謝をして産んでくれた母親に感謝し、逢えたと言う事実に感謝を。
例えそれが誰かを傷付けていたとしても。
産まれたと言う事実は拭えない。













「八戒は良い日に産まれたね」

又窓の外に眼を向けた。

「月が綺麗で空が高い素敵な日に産まれたんだから」

貴方は月に祝福されてこの世界に生を受けた。

「仲秋の名月が貴方を祝福してる」

大きく赤く輝く月が辺りを照らす。

「十六夜は次の満月への準備」

揺らぎなく変わらずにある。

「次の満月の為の月」

「ありがとう」



























綺麗に輝く月の裏には光の当たらない場所がある。
そこを隠し綺麗な部分を見せる月。
内心を隠し続ける人の様に…。

























2005年の八戒誕生日夢小説です。
すみません。
余裕こいてたら時間が無くて意味不明な誕生日ネタになりました。
今年の仲秋の名月はとても綺麗でしたね。
22日の讀賣新聞ではとても綺麗な写真が載るほどでした。
一応9月まではフリー夢とさせて頂きます。
お持ち帰りの方はBBSにでも一言下さると嬉しいです。
何だか意味不明でしたが、取敢えず永遠の23歳、猪八戒へ。
2005/09/21