<Private teacher>
八戒の家のリビングで机を挟み向い合って座る。
「良いですか、現代文は簡単です」
現代文…と聞けば誰だって漢字くらい書いとけばテストでも何とかなる。
そう思って一番最後に回される教科。
授業を聞いてノートを取ってそのノートを見れば…。
そうして行って失敗した例もある。
「ですが甘く見てはいけません」
本好きな子は現代文の読解を得意とする。
良く耳にする。
「文章が何故こうなるのかが解らないと問題を理解する事すら出来ませんよ」
前回のテストでまんま上記の通りの勉強法で見事撃沈した。
漢字が解っても、精々各1・2点しか取れない。
となれば差が付くのは勿論読解問題。
学校の定期テストであるから問題文の中で出て来たのは授業で取り扱ったものだけだ。
それなのに、聞いていたのに何処が答えだったのか…或いはヒントとなる場所だったのか思い出せなかった。
1つは初見の問題文だったがそれも時間が無く終わった。
それが悔しくて悔しくて、は次のテストに燃えていた。
「そうですね、この文章は比較的に簡単ですから解いてみて下さい」
そう言って八戒は机に乗っていた3枚のプリントをに渡した。
「時間は制限しませんから解き終わったら声を掛けて下さいね」
クーラーの程好く利いたリビングで2人は文章を読み始めた。
八戒も同じ物を読んでいる。
約15分して八戒が手にしていたペンを静かに机に置いた。
全て解き終わったと言う事だ。
そして答えを見て自分の物と比べていた。
その5分後にもシャーペンを置いた。
「八戒…」
「出来ました?」
自信なさ気に八戒にプリントを渡した。
の書いた答えに赤ペンで○×を付ける。
見事に×ばかり付く。
その様子を見ていられなくなっては俯いてしまった。
「出来ましたよ」
に手渡された解答用紙はやはり○の数よりも圧倒的に×の方が多い。
「…ごめんなさい」
「大丈夫ですよ、解き方が解っていないだけですから」
それが解れば現代文が初見でも大丈夫だと八戒は笑った。
は頷いて受け取ったプリントを見た。
「先ず一緒に読んで行きましょうね」
八戒は席を立っての隣へと移動した。
「ペンを持って重要な所に線を引くんです」
基礎から教えて行ってくれるとの事ではホッとして言われた通りペンケースから赤いインクのペンを取り出した。
「"この"とか"その"とかは何て言うか解りますか?」
「指示語?」
現代文では重要な指示語。
指示語の指す物について問われる問題も有る。
若しくは問題のキーワードになる場合も少なくない。
「この文が指している指示語の内容は何処だか解りますか?」
「う〜ん………この前の文?」
は指示語の前の一文を指差した。
「正解です」
にっこり笑って何故指示語が前の文を指すのかを説明し出す。
「指示語は後の文にヒントがあるんです」
八戒は文章を指差し1つずつ読み進める。
ペンを持って此処と此処は=で結ばれる。
横に線を引いてそれを=で結ぶ。
本当に初歩的な事だが、初見で文章を読解しなければならない時には必ず重要な所にチェックを入れる事。
「それから空欄部分には後ろにヒントがあります」
「うん」
「でも答えじゃないんです」
ヒントを見て同じ事を違う言葉で置き換えたりしてる物が答えとなる。
「問1はそうすると答えは…」
「えっと…3じゃなくて1?」
自分の答えでミスを見付けたは訂正し自信なさげに答える。
「正解ですよ」
にっこり笑って教えてくれる。
そんな八戒に一瞬目を奪われたが我に返って問題に目を向ける。
全部解いて採点をした後の解説が物凄く丁寧で解り易くて読み返して行くとは自分のミスを直ぐに見付けられた。
そして訂正すると正解を答える事が出来る。
「大分出来る様になったよ〜」
「ん、未だ数こなさないと…ですけどね」
八戒の説明だと学校の先生が教えてくれるよりも遥かに解り易い。
「八戒が先生だったらテストで満点採れるかも〜」
なんてね〜。
等と語尾にハートマークが飛びそうな程テンションが上がった。
「ただいま〜」
学校から帰ってくると玄関での母親が嬉しそうに立っていた。
珍しく玄関迄来て出迎えをしてくれた。
少し不振に思いながら話し掛けると良いから来なさいとその笑みを崩さずにの腕を引張った。
「ちょっと何?お母さん」
グイグイとの腕を引きリビング迄連れて来た。
ドアを開けて無理矢理を入れるとテーブルに八戒がいた。
「おじゃましてます」
ニッコリと何時もの笑顔で出迎えるがには何が何だか解らない。
「……何…で?」
ちゃっかりとお茶まで飲んで暢気に座っている。
母親は何時の間にかから離れ冷蔵庫からケーキを取り出し八戒に差し出していた。
そして自分も八戒の前に座りケーキを食べる。
「も座りなさい」
立った儘ボーっとしてるを見かねて声を掛ける。
その声に我に返ると八戒の隣に座った。
「前々からお願いしてたんだけどね、もその気になったみたいだし」
「何が?」
母親のマイペースは今に始まった事ではないが此れだけでは理解出来ない。
何の事か解らずケーキを食べると母親は至極嬉しそうにしていた。
「八戒君がの家庭教師をして下さるのよ」
「は?」
母親はニコニコと2人で話し合っていた事をに説明した。
が勉強を教えて貰い始めている時から出ていた話らしいが、の母親は是非八戒に家庭教師になって欲しいと言っていたらしい。
八戒は本人にやる気がないのに無理には出来ないし、家庭教師と言う事は報酬を貰う事になる。
その2つの点で断り続けていたらしい。
「それで何で急に家庭教師なの?」
断っていた筈なのに何故か八戒は家庭教師の話をOKした。
それが如何してか解らない。
「が言ったんですよ?」
記憶を辿ってみるが八戒に家庭教師になってくれと頼んだ記憶は…。
「あっ!もしかしてこの前の…」
声を上げると八戒は『言いましたよね?』と笑った。
「でも給料は貰えませんよ?」
八戒は好きで教えている為にお金は要らないと言い続ける。
如何しても其処だけは譲れないらしい。
「なら、夕飯はうちで食べましょう」
有無を言わさず八戒が夕飯を食べると言う事で納得した母親は周りが止めるのも気にせずにキッチンへと消えた。
もう早速今日かららしい…。
「此れから宜しく御願します」
「いえいえ、此方こそ」
深々と頭を下げると八戒。
2人で顔を見合せて笑った。
不発です…。
八戒スランプでしょうか…落ちが今一です。
すみません(汗
キリ番3900のリクで『八戒のカテキョ物』です。
リクに添えてるでしょうか…ヒロイン若々しいのかな??
さん!!1年以上も御待たせしてしまい申し訳ないです。
懲りずに又遊びに来て下さいませ。
黒須様に限りお持ち帰り可!
返品可!!
2005/08/21