<only>
他人と解り合える訳がない。
誰とも分ち合える筈がない。
だってそうでしょう?
この世界に在るモノは全てが幻で、偽りなのだから。
『お前解んねぇよ』
ついさっき…1年間付き合ってた同い年の彼と別れた。
否、振られた。
一方的でこんな台詞を吐いてあたしの前から消えてった。
別に、好きで付き合ってた訳じゃない。
断るのが面倒で唯何時の間にか付き合ってた。
何時か冷めるだろうとあたしも放っといた。
でも、今回の彼は以外に長持ちして幾らあたしが何時もの気紛れを見せても1年も保った。
『何考えてる訳?』
あたしと別れる前に必ず誰もが聞く事。
誰と居ても上の空で話を聞いてる様にはとても見えないらしく聞かれる。
『さぁ…何だと思う?』
問われれば必ず答えるこの科白。
もう一体何度この言葉を口にしただろう。
この言葉を言わせる男は大抵大した事なくて、それから数日後には別れる。
『好きだ』
………好き?
『ずっと側にいたい』
……あんただけね。
全部全部ウソの言葉。
そう思ってるのは相手だけで、しかも相手も心の底はそんな事思ってもいない。
全部が偽り。
さっき迄彼氏だった奴は平然と浮気をしてたし、その前もその前もそうだった気がする。
顔なんてろくに見た事なかったし、名前も呼んだ回数なんて片手で足りるか両手で足りるか…。
そんなもん。
くだらない。
「お前また振ったのか…」
「違うわ、振られたのよ」
大体パターン化して来てつまらない位だ。
学校の屋上に誘われる時は必ず振られる。
まぁ、特に如何って事ないし。
そして、必ずそこには野次馬がいて一部始終を見てる。
「お前何でそんなに振られるんだよ」
そんな事こっちが聞きたいわ。
相手から告白して来て振る何て在り得ないでしょうよ。
「…さぁね」
そう言ってあたしが今会話してる人間の横に座る。
此処は落着く。
誰も邪魔しない。
誰もあたしに構わない。
…一人だけの世界に入れるから。
「おい」
何時もこの後は黙って本を読んでるだけなのに今日は何故か会話を求める。
「…何よ」
珍しい事にその話に乗った。
風は強くて秋の時期には少し冷えた。
屋上から見える雲。
今日は少し曇り空だった。
それから授業開始のチャイムがなっても互いにその場から離れる事はなくて唯居た。
久し振りに授業をサボった。
「景吾は彼女作らないの?」
「あぁ?」
何時も何時も別の女の子連れて歩いてる割にそれは彼女ではない。
彼女を連れている彼をあたしは見た事がない。
「見た事ないんだけど」
親しい仲じゃないけど、今クラスで授業を聞いてる人間寄りかは互いの事をそれなりに理解している。
けれど一度も見た事がない。
「…面倒臭いからな」
彼女と言うのは彼氏よりも面倒な人間で、嫉妬に燃えるしプレゼント、デートに五月蝿い。
それが女子だけとは限らないけれど。
「あの人数を断ってるの?」
一人二人ならば可愛らしいものだろう。
景吾相手ならば一体何人の女の子を振って来たのか。
「まぁな」
「ご苦労様ですね」
茶化してる訳じゃなくて本気で。
一人でも納得出来ない子は何時までも食下がらないし、天津さえ泣き出す子も居るのだから。
「下手に付き合うよりはマシだぜ」
遠回しにお前も見習えと言われた気がした。
それでもその科白は嫌味の様には聞えない。
それは何故か…知ってはいけない。
それから少しして景吾はいなくなった。
何処へ…。
それはあたしに知らされる事はなかった。
テニス部のメンバーによるとテニスが上手いからと言う事で海外から声が掛かったらしい。
あたしは何も知らされていない。
それは…そう言う事。
彼にならば少しでも自分の本心を語る事が出来たのに。
けれど、彼はあたしに何も語る事はなかった。
それは……。
あたしは、景吾の人生に必要のない人間だったと言う事。
景吾の周りで騒いで彼女になりたいと訴える女と同じだったと言う事。
景吾にあたしは要らない人間だったと言う事。
「言葉にすると簡単ね」
もう、誰も来る事がないだろうこの屋上で。
誰にも聞かれる事のなかった会話。
あたしの横には誰もいない。
あれから、告白してくる人にはちゃんと返事をしてる。
『誰とも付き合う気はない』と。
誰にも付き合える筈はない。
あたしは誰にも愛されないのだから。
あたしは…要らない人間なのだから…。
誰も要らないと言ってくれればいい。
『お前なんか要らない』って。
そうすれば、あたしは楽になれるのに。
「バーカ」
もう届く事はない。
もう聞かれる事はない。
もう…振られる事もない。
誰からも必要とされなかった人間は今日も一人で屋上にいます。
優しく頬を撫でる風は今日も冷たかった。
途中でBGMをカウントダウンに変えたら後半から素晴しい事に…。
たしか、二人で会話してる所迄は違う曲だったんですよね。
それが何時の間にか…。
名前変換はないし、テスト前に何遣ってんだよ自分。
明日のテストはボロボロですね。
2005/10/19