<ジグソーパズル>












最近私はジグソーパズルを買った。
たまたま立ち寄った未がデザインされてる某文房具屋に有って、吸い込まれる様な深い深い蒼色に心を奪われて眼が離せなかった。
幾つも有る海を描いたジグソーパズル。
その中に海豚が2頭描かれている物。
その海豚から眼が離せなくてつい買ってしまった。


「遅くなりました」
今日は八戒が仕事から帰って来て手料理を食べさせてくれると言う約束。
先に八戒の部屋に鍵を借りて入ってた私はケースも買ってないのにジグソーパズルをあけた。
未だ形のないピースは全部で1000ピース。

「おかえり」
箱に入った侭のピースに手を入れるとゴツゴツとした感触がする。
バラバラと音を立てながら手から落ちて行く。

「ジグソーパズルですか?」
私の背後まで来て覗き込む。

「衝動買いしちゃって、ケースもないの」
ただその蒼色に捕らわれただけ。

「僕の部屋で作ります?」
隣に座って箱に描かれたデザインを見て笑った。

「海豚好きですよね」
前に水族館に行った時も初めて見る海豚に釘付けだった私に海豚の写真をくれた。
それからずっと海豚が好き。

「ケースないし」
所詮は衝動買い。
何の計画もなく買った物。
置く場所も組み立てる場所もない。

「次の休みに買いに行きましょう」
八戒は良く笑う人。
笑顔を向けて話してくれる人。

「ちゃんとサイズを測って」
手の中で未だ形の成さないジグソーパズルのピースは一つ一つでも綺麗で。

「この部屋で組み立てて下さい」
八戒の透き通る瞳の色に似てる。

「迷惑掛けるよ」
髪に手を伸ばして笑った。

「貴方がいる事を迷惑だなんて思った事ありませんよ?」













その次の日曜日、私は八戒と同じ文房具屋にいた。
サイズを測ったジグソーパズルのケースを買いに。
部屋の何処に飾ろうかとかどれくらいで出来るかとか話ながら。
八戒と手を繋いで歩いた。
与えられたジグソーパズルのケースを床に敷き、端のピースだけ別に出して少しずつ組み立てて行った。
ケースを買ってから約1週間後、初めて組み立てた1000ピースのジグソーパズルは真ん中1ピースを残して出来上がった。

「最後の1ピースは私が八戒の部屋に住む様になったら」
その時まで八戒の部屋の片隅に静かに寝かせる。
2頭の海豚は仲良く月明かりを受けて泳いでた。

















パズルの柄は前に緋桃が買って、作っていないジグソーパズルの絵です。
めちゃくちゃ綺麗でかなり悩んで買ったんですけど時間が無くて。
ジグソーパズルやりたいなぁなんて思いながら書きました。
かなり短いですが、珍しく八戒さんで。