<Voice>









そう言えば、誰かと一緒に食事だなんて久し振りだな…。
テニス部員と食べたのも大分前だったからな。

「使い方が解らないなら自由に食べろ、箸もある」

使い慣れないナイフやフォークを必死に使いこなそうとする辺りからしてきっと負けず嫌いなんだろうな。
そう言っても必死に見よう見真似で頑張ってる。
の言いたい事が解る気がするのは何故だろうな。
他人に興味のない俺が…。
今日は金曜日で明日は休日。
部活も昼迄しかない。
そんな事を考えてどうなる訳でもないが、何故か考えてしまう。


















今日も終わった。
長い様で今日は短い。


















明日はきっと彼奴等の事だから此処に来るだろうな。
を見に…。


















「なぁ跡部、今日跡部ん家行ってもええ?」

「…俺も」

「俺も気になります」

あの日からしつこく聞いて来たが俺が一言も話さない事に痺れを切らしたのか、部活後に寄ると言って来た。

だ」

「「「え?」」」

どうせ止めても無駄だ。
名前を教えて俺はコートへ向かった。


























「お帰りなさいませ」

「あぁ」

家に着くと飽きる様な出迎え。

「お邪魔します」

会釈して入る鳳。
後輩はしっかりしてるって言うのに、何でコイツ等は…。

ガチャ

リビングに入った俺等に続いて扉が開いた。
真っ白な膝丈のワンピースを着てリビングに入って来た。
扉の近くには俺がいた為、他の3人は見えなかったらしい。
嬉しそうな顔をして紙に書かれた
 『お帰りなさい』
と言う文字を見せた。

「なんや?」

忍足の声が聞こえては初めて他に人がいる事に気付いた様だ。

「初めまして」

鳳の声を聞いても緊張してか俺の後ろに隠れてしまった。

「なんだ?」

宍戸の不満げな声に肩を震わせた。

ちゃんやろ?怖がらんでええよ」

諭す様な忍足の声に少しだけ顔を覗かせる。

「取り敢えず座れ」

にも座る様諭すが拒否する。
かなり警戒している。
着替えて来ようと立ち上がった俺の袖を引っ張る。

「直ぐ戻る」

そう言っても首を横に振った。
仕方なく着替える事を諦めてソファへ座る。
ソファに座っても袖を握った儘だった。























「未だ喋れないのか?」

一通り自己紹介をしてからが筆談をしてるのを見て言った。
にとってはショックな事だったらしく俯いてしまった。

「宍戸」
それに気付いた忍足が宍戸に声を掛けた。
宍戸はの様子に気付き悪いと謝った。

ちゃんて幾つなん?」

暗いムードを消し去る様に忍足は明るめに話題を変えた。
 『16歳』
紙に書かれた年齢は自分よりも1つ上だった。
高校に行っていれば2年らしい。
今迄何一つ知らなかったのだと改めて思い知らされた。
俺等が中3だと知るとは驚いていた。
 『同い年かと思ってた』
そう紙に書き足された。

「そやね、お姉さんには見えんわ」

そう言って忍足が笑うともつられて笑った。





























あとべさんの知り合いが来るなんて思ってもいなかったから驚いた。
あの時助けてくれた人達なのに、お礼も出来なかった。
おしたりさんが言ってたけど、明日の試合を見に来たらって。
あたしあとべさんの事何一つ知らなかった。
あとべさんが中学生で氷帝の生徒だった事も、テニスで部長もしてる人だって事も。
何にも知らなかった。
 『明日の試合見に行っても良い?』
夜にあとべさんに紙を見せたら余り良い顔をしてくれなかった。

「好きにしろ」

短く言われた言葉は酷く冷たい物だった。
 『テニスの試合が見たい』

「…連れてってやるよ」

溜め息を吐いて許可をくれた。
無理を言ってしまったかも知れない。
我が儘を言って困らせたかも知れない。
そう思ったら悲しくなった。
 『ごめんなさい。無理なら良いです』
そう書いた紙を見せて部屋に入った。
あんな溜め息を気いたら行くのは悪い。
あたしは迷惑を掛けてるのだから、我が儘はダメ。
そう言い聞かせて泣きそうになるのを堪えた。



























「起きてるか?」

朝、目が覚めるとあとべさんが部屋に来る。
もう恒例になりそうだった。

「部活、連れてってやるよ」

昨日とは違った声音でテニスを見せてくれると言った。

「帽子忘れんなよ」

あとべさんが出掛ける時間にあたしもあとべさんと一緒に連れて行ってくれる。
あとべさんの車に乗るのは初めてで、車に詳しくないあたしは吃驚した。
此がリムジン。

「早く乗れ」

変わらない声に戸惑ったけど、あとべさんが遅刻してしまうのであたしは急いで車に乗り込んだ。
車の中で会話はなかった。
あたしにそんな余裕がなかったから、気を使ってくれたんだと思う。


















「あれ?ちゃんやん」

昨日会ったおしたりさんがジャージ姿でいた。
広い敷地に驚いていたけど、テニスコートが3面もある事に驚いた。

「忍足、アップしろ」

今日はレギュラー内で練習試合をやるっておしたりさんが言ってた。
それでレギュラーを落とされる事はないみたいだけど。
皆本気で試合をする。
あとべさんも…。
正直、あとべさんがどれほど強いのかとか解らなかった。














おしたりさんは自分の試合が始める迄、あたしと一緒にいてくれた。
人見知りの激しいあたしにとっておしたりさんは心強い感じがした。















あとべさんは部長の仕事が忙しいみたいだった。
無理を言ってしまった後悔が少しした。
せめて邪魔にだけはならない様に。


























あとべさんは朝とは変わってイライラしてる気がした。
何故か解らないけど。
気になっておしたりさんに聞いてみたけどおしたりさんには解らないみたいだった。
あとべさんはどうしたのか気になってしまう。
けど邪魔したくない。

ちゃん気になるんやろ?行こか」

そんなあたしを横で見ていたおしたりさんがあたしの手を引いてあとべさんを呼んだ。

「んだよ忍足」

「ん〜?ちゃんがな…」

邪魔するつもり等端からないのだけどあとべさんを引き止めてしまった。

「あ?がどうした」

「俺気に入ったわ」



























Voiceでは跡部の小説だと言うのに忍足がしゃしゃり出てますね。
でも跡部より忍足が好きです。
なのに何故か跡部夢多いよな…。
後3話、お付き合いお願いします。
2005/09/22