<Voice>











忍足が俺に何を言おうが関係ない。
それが例えが好きだと言う様な内容だろうと。

「だから、何だ」

がその場に居ようと関係ない。
俺はに対して何の感情もないのだから。

「なら俺が貰うな」

俺達の会話を聞いていたは驚いた顔をしている。
何かしに来たらしいが今は自身それを忘れている。
只眼を見開いて忍足の顔を覗き込んだ。

「侑士!試合だぜ」

向日が忍足を探しに来た。
それを機に俺はコートへと向かう。
の横を通り過ぎるとが慌てて俺のジャージを掴むがその手を振り払い足を進めた。
それからは追い掛けて来なかった。























正直跡部のお気に入りを見たかっただけやねん。
だから別に好きとか嫌いとかとちゃう筈やったんや…。
けどな、跡部に棄てられてしもた思てるちゃん見たら、ほっとけへんやん。

「大丈夫か?行こ」

俺に背中を押されてズルズル歩き出すちゃん。
此でちゃん貰たで。
俺かて跡部相手に余裕なんてあらへん。

「侑士、跡部機嫌悪いのか?」

岳人は途中から来たからなぁ。
俺等の話なんて聞いてへんし、何が起こったかも解らんやろ。
せやけど…今のちゃんにはキツいやろ。
言えへんよ。

「朝から悪いみたいやで」

「ふーん」

素直な岳人の扱いは楽でええわ。
























俺はちゃん好きなんねん。
跡部にだけは譲れへん。
試合中に考えてたら負けてまいそうやからな。
今だけや。
試合相手は…跡部。
さっきの跡部じゃ本心か解らん。
せやけど、機嫌がこんな悪なる言う事は少なくともは嫌いやなくて好きな人間に入るって事やろ?
負けへんで。

「忍足2サーブ」

試合始まって俺も跡部も本気や。
跡部が何を思て試合しとるかは知らんが、俺はちゃんが好きやから。
跡部には…。




























そうは思てても200人の頂点には勝てへんかったわ。
俺も惜しい所迄行ってんやけど…。
汗拭いて、ドリンク貰てちゃんの居る場所に戻る。

…ちゃん?」

其処にちゃんは居らんかった。
跡部の所にも他のレギュラーの所にも。
俺と跡部の試合で今日の練習は終わる。
他のメンバーに行き先聞いてみても知らん言うし。























ちゃんは居なくなった。































家に帰って乱暴にのいたドアを開けた。
荷物等にはない。
家に帰っているかいないか、それしか確認する術はない。
広い部屋には誰もいなかった。
のいなくなった部屋は前にもまして広くなった気がした。























「お前…」

跡部と忍足が必死になって探してた奴がいた。
フラフラと歩いて、時々空を見上げていた。

「何してんだよ」

肩を震わせて驚いたが俺しかいない事に安心してかほっと息を吐いた。

「跡部と忍足が探してたぞ」

言うと俯いてしまった。

「何処に行くつもりなんだ」

『家に帰る』
ハッキリとした文字で紙に書かれた。
家に帰るって事はあの母親の元に戻ると言う事。

「本気か?」

俺を見て力強く頷いた。
跡部と忍足に迷惑を掛けたから…とでも言いたいのか。

「仕方ねぇな、俺んち来い」

この儘家に帰したら、跡部と忍足に何を言われるか解んねぇ。
俺の提案に首を振って否定したが、俺は無理矢理家に連れて行った。

「俺が跡部に怒られるだろ」

そう言うと大人しく俺の後を着いて来た。

「何か食うか?」

偶々家には誰もいかった。
跡部に連絡をするかと訪ねても拒否するばかりだ。
何があったのか解らない俺にはどうする事も出来ない。
俺等以外誰もいない家に沈黙が続いた。

「跡部と忍足と…何かあったのか?」

一瞬身体を震わせて俺を見た。
ソファに縮こまって座って膝の上に握られた拳が震えていた。

「頷くか首振るかで良いから」

一息置いてもう一度訪ねた。

「跡部と忍足と何かあったのか?」

静かに頷いて下を向いた。
跡部とか忍足とかは気になったが、其処は敢えて聞かなかった。

ピリリ…ピリリ…

マナーの解除された携帯が振動しながら音を生み出した。
ディスプレイには跡部の名前。
此で出ないと明日何を言われるか解らない。

「もしもし…」

『俺だ』

「あぁ、何か用か」

『お前の所にがいるだろ』

「…お見通しってか」

『当たり前だ、俺様を誰だと思ってる』

「あー、で?」

『代われ』

「喋れねぇだろ」

『良いから代われ』

相変わらずな跡部の口調に安心した。
怯える様に俺を見たが、携帯電話を渡した。

『おい…』

跡部がその後何て言ったかは知らない。
けど跡部の家に帰ると言い出したから送ってやった。
と言っても跡部から言われたからだけどな。
歩きながら何か書いてたが特に気にもせず歩いてると、俺の袖を引っ張った。

「んだよ」

『ありがとう』
と書かれた紙を見せて笑った。
俺は笑った顔なんて見た事なかった。
逃げ惑い怯える顔と誰かと話して笑う顔だけ。
俺に向けられた笑顔は初めてだった。


























跡部の家に着きチャイムを鳴らすと跡部が出て来た。

「悪かったな」

「あぁ」

『さようなら』
と書かれた紙を見せてお辞儀をした。
暫く歩いて後ろを振り返るともう跡部達の姿はなかった。

「…激ダサ……」





























電話で跡部は何て言ったんでしょうね…。
そして、裏話?ですが宍戸はさんに心惹かれちゃいました。
最後の一言はそんな感じで受け取って欲しいなぁと。
ちょっと無理ありますか?
2005/09/22