<Life style>
ミーンミ−ンミーン…
暑い夏が終ろうとしている。
鳴いていた虫達の声は徐々に少なくなって行く。
此れから秋が来る。
「蝉が死んでる」
道路を歩いているとこの季節には珍しくない蝉の死骸。
綺麗に形を遺した儘だった。
「蝉?」
横にいた紅い髪の青年が顔を覗き込ませる。
「ホントだ」
煙草を咥えてそれ以上喋ろうとはしなかった。
「可哀想」
そう一言だけ呟いて歩き出す。
又蝉の死骸。
少しだけ眼を向けるともう先へと進みだす。
その後ろを歩いて着いて行く。
「見て悟浄、此れ」
紅い髪の青年の服を引張り呼び止める。
「何?あ…」
羽根を?がれ飛べなくなった蝶々。
それを懸命に巣に運ぼうとする蟻達。
その姿をしゃがみ込んで見ていた。
悟浄はそれに付き合い隣に腰を下ろした。
「…ねぇ悟浄、如何して蝉は成虫になるの?」
蝉の抜殻を見て悟浄に問い掛けた。
「育つからでねぇ?」
何本目か解らない短くなった煙草の火を消して抜殻を見た。
「幼虫の儘で居れば長生き出来るのに」
蝉は成虫になってからの寿命は短い。
一週間。
若しくはもっと短い者も居る。
それでも成虫になり懸命に鳴く。
蝉だけではない。
蝶々もそうだ。
幼虫の儘ならこんな風に蟻に食べられる事もない。
それでも羽根を開き懸命に飛び廻る。
「空に憧れたんじゃねぇの?」
幼虫の間、土の中で育ち続け何時か羽ばたくだろう空を夢見。
幼虫の間、蛹として頑丈に守られていたけれどそれでも空に憧れた。
「…そっか」
目標を達するまでに長い年月を掛けて只管歩き続けた道。
其処に辿り着き命が尽きた。
「あたしもそんな風に生きたい」
見ていた蝶々の死骸はもう既に巣へと運ばれていた。
遺されたのは片羽根だけ。
誰もその蝶々の事は憶えていないだろう。
「頑張れよ」
頭に手を置き撫でながら笑った。
負けじと笑い返した。
「悟浄も隣にいてね」
咲誇る桜が美しいのは一瞬。
死に逝く夏の虫が美しいのは儚いから。
その中で生き死ぬから。
ずっとこんなテーマで書きたいと思ってました。
で、書くなら悟浄で。
もう1本別の解釈で似た様な物を書きたいと思ってます。
勿論悟浄で。
現在、悟浄夢を増やそうって事で活動中(笑
2005/09/11