<涙>








あんなに純粋に涙を流したのは初めてかもしれない。
あんなに泣いたのは初めてかもしれない。
そしてこの先にそんな涙を流せると…そんな恋が出来る様に。
今度はその気持ちがお互いになる様に…。













「眼…腫れたかも」

泣き過ぎた…。
何か涙が出たら止まらなくなった。
だから、思う儘に泣いてみた。
…2時間も泣くなんて。
私には初めてで、信じられない。

「家帰ろ…」

それは唯の独り言。
だって此処は放課後の学校の屋上。
もう人なんていないし、元々私しかいないんだから。

「アレ、もう帰るんですか?」

屋上のドアを開けて出ようとした時に、声が聞こえた。
人がいる…私だけじゃなかった?

「本当は声掛けたかったんですけど」

声掛けようとしたって事は、ずっといたって事…だよね。
ヤバい、ずっと見られてたの?!

「ハンカチ使います?」

出て来たのは背の高い人。
何処となく、犬っぽい感じで…見た事あるかも。

「あ、テニス部の…」

「鳳長太郎、2年です」

近寄って来てハンカチを渡してくれた。
笑顔を向けてくれてほっとする。

「ありがとう」

素直に受け取れるのは何で?

「冷やしておいたんで」

用意の良い事だ…。
一瞬不振に思ったけど、それに鳳君が気付いたのか付け足して言った。

「そこに水道あるでしょ?」

屋上に設置されている水道の方を指差す。

「ずっといた?」

「貴女が来る20分前から」

私より長くいるって事は、勝手に私が誰もいないって思って泣いてたのか。
恥ずかしい…。

「送って行きます」

「だ…大丈夫だから」

急に言われてホントにびっくりしてるんだから。

「夏場は変質者多いですから」

行きましょうって言って腕を引かれた。
結構強引な感じなのね。
見た目じゃほわほわしてるのに。

「じゃあ、お願いします」

初めて話をした人とどうして一緒に帰ろうとしてるんだろ。
解んないや。
頭、痛くなって来たし。

「家はこっちですか?」

そんな問い掛けにもちゃんと目を見てる。
礼儀正しいんだね…あぁ、私の方が先輩だもんね。
当たり前かな?

「顔色悪いですね…」

あんまり喋らなくなったのに気付いたみたい。
近くにある公園で一休みしようと鳳君がまた腕を引いた。

「熱ですか?」

不安そうに顔を覗き込んで来る。
手を額に当てて自分との温度差を計る。

「ちょっと高いですね」

「大丈夫、ちょっと頭痛いだけ」

頭が痛いのは泣いたから。
泣くと頭が痛くなって眠くなる。
泣き疲れってヤツね。
少し休めば家に帰るのに支障はないし、その後は直ぐに眠れば良い。
公園のベンチに座らされた儘いると鳳君がふと立ち上がった。

「ちょっとすみません」

そう言うと走って行ってしまう。
一体何しに何処へ行ったのか。
鳳君が行って暇な時間…ボーっと公園を眺めてると、また涙が出た。
さっきあんなに泣いたのに。
未だ私の眼からは涙が溢れる。

「…ッ………」

そんなに好きな人だったんだって、今更になって気付いた。
私が思っているよりもずっと…大好きだったんだ。

「大丈夫…ですか?」

不安そうな声が聞こえた。
…落ち着きを取り戻すにも取り戻せずにいる。
鳳君の顔が涙で滲んで見えない。
これ以上泣いたら明日は学校に行けない。
必死に涙を堪えて、拭って…止まらない涙と格闘する。

「泣いて良いですよ?見ませんから」

ベンチに座る私の前に立って腰を屈めた。
…あったかい。
鳳君は大きくてあったかい。
抱き締められて、胸元に顔を押し付けたらまた泣けた。
鳳君の優しさが痛かった。
ずっと、泣き止むまで鳳君は抱き締めてくれて…背中を優しく叩いてくれてた。














唯今は、この優しさと温もりに身を任せていたい。















初鳳です!!
何か名前変換なくて申し訳ないッス(汗
だから、最近リハビリばっかなんだよね…。
こんな風に泣いた次の日の通学中の電車の中で携帯でカコカコと打ってました。
誰にするかなんて考えてなかったから、如何するか悩んだ時にしっくり来たのがちょたでした。

ヤマなし〜 オチなし〜 イミなし〜(2ちゃんネタ/笑

2006/6/29