雨 アメ あめ
寒いのか、蒸し暑いのか解らない部屋。
空調が効き過ぎている様な、重苦しい空気で呼吸がし辛い様な。
日本の四季の中にあるきっと一番嫌われているであろう季節。
梅雨。
天気予報で関東も梅雨入りした事を知る。
傘を手放せなくなる季節。
憂鬱な季節。
雨は決して嫌いではない。
そう思っていても、こう何日も降り続けば嫌にもなる。
外に出れば大雨。
部屋にいても何もない。
唯ベッドでゴロゴロと借りて来た本を読むだけ。
それも束の間。
あっと言う間に本はクライマックスを迎えてしまう。
他の本を手にする気も起きず、唯ぼーっとベッドで仰向けに寝転び天井を見上げる。
雨音が聞こえる…心地が良い。
眠るにもそんな欲は湧いて来ない。
ふと考える。
『今何やってるんやろ、』
土日と週末の連休。
それにも関わらず雨は降り、雨の日に出掛ける気のない彼女は月曜日から予定していたデートを断る。
『天気予報で雨が降るから今週末は出掛けない』
そんなつれない言葉で断られた。
土曜は映画を見ようと思っていたのに…。
日曜は何処か好きな所に出掛け様と思っていたのに。
全てが台無し。
雨の所為。
『あ、雨が降らなかったら出掛けよ』
去り際に付足す様に答えた彼女。
でもそれは有得ない事で、ずーっと前から天気予報で週末は雨。
降水確率は80%だった。
そんな天気を高が人間が変えられる事もなく、今こうして暇を持余している。
ピリリリリリ…
ベッドの横にあるサイドテーブルが揺れた。
上に置いてある携帯が音と共に震え出した。
『』
ディスプレイにはそう書かれている。
普段電話何てして来ない彼女。
慌てて電話に出ると、不機嫌な彼女の声。
「遅い」
「ごめんな」
相変わらずなその性格。
今日は日曜日。
金曜の放課後に別れてから未だ2日間も経っていないのに、酷く久しぶりに声を聞いたきがした。
「何か用あってん?」
「ないと電話しちゃダメなの?」
不意打ちだ。
「えぇよ?初めてやん、電話くれるん」
何故か笑みが止まらない。
如何しようか。
「暇」
やっぱり、彼女もそう思ってたのか。
「雨やからね、仕方ないやろ」
土曜日から自分に言い聞かせて来た言葉をその儘彼女に言う。
「知ってる………でも楽しみにしてたのに」
本当は昨日も今日も出掛けたかったのだと告げられると嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
何と言えば良いのだろうか。
「俺も出掛けたかったわ」
考えたプランを雨に潰され、さっきまで不機嫌だった。
けど今は、掛かって来た1本の電話で此処まで嬉しくなった。
「来週は晴れるって」
「ほな、来週は出掛けよな」
その誘いに返事はない。
如何したのかと思い名前を呼ぶ。
少しの沈黙。
電話では解らない表情や仕草に少しだけ苛立ちを感じる。
「今」
「何?」
何の事か解らずに聞き返すと伝わらない事への苛立ちが聞こえた。
「だから、今が良い!」
「雨やよ?」
「出掛けない」
「何処に行くん?」
ピンポーン
タイミング良くインターフォンの音。
「悪い、お客来たわ」
「……後で電話」
今度は掛けて来いと短く告げて電話が切れた。
はぁー…。
大きな溜息。
短い電子音で楽しいお喋りも中断。
こんな雨の日に訪問して来る客人が理解出来ない。
「これでセールスだったらマジでキレるで」
部屋に響いた独り言。
誰も聞いてはいない…雨音が気になり出した。
「はい、何方ですか?」
ドアを開けて見るとそこにはさっきまで電話をしてた相手。
「な、んで…?」
「来ちゃ悪い?」
頭が着いて行かない。
着いて行けない。
「雨の日は出掛けないんと違うん?」
「濡れるから」
傘を差して来たのにも関わらず、服は濡れている。
水分を含んだ髪は冷たそうな肌に貼り付いている。
「タオル持って来るから中に入って」
リビングに通すと彼女が歩いた跡、水滴が落ちる。
「荷物は?」
「濡れるから、携帯と鍵と財布だけ」
ポケットに仕舞える物だけ持って歩いて来たと言う。
タオルを渡すと髪から水気を取る。
それも適当に取って、首に掛けてしまう。
仕方なく座らせて髪を拭いてやる。
「何でこんな雨の中来たん?」
「会いたかったから」
難なく言いのけてしまうのは如何してだろうか。
冷たいのか甘えたいのか解らない。
「侑士の顔、見たかったから」
雨で暇だった。
そしたら声を聞きたくなって電話を掛けた。
電話を掛けたら、如何しても顔が見たくなった。
電話を掛けながら歩いて来た。
そう言う事だった。
「明日、朝食作ったげる」
「会社は?」
「休み」
年上な彼女に振り回されてばっかりのこの恋。
それでも楽しいと思えるのは、彼女がこんな性格だからか。
そう考えさせられた雨の降る梅雨。
……えっと、設定が超微妙ですね。
ヒロインが社会人だって、最後まで解らなかったし…(書いてた本人も知らなかった/笑)
我侭と言うよりも掴み所のないヒロインにしたかったんですが。
それと相変わらず関西弁は適当です。
後半もっと細かく描写したかった…才能がなかった(泣
曇りの肌寒い日 2006/06/25