<ring>
婚約指輪…結婚指輪。
女の子なら誰だって憧れる物だ。
誰だって…。
「決まらない」
友達と2人で雑貨屋巡りを初めて約2週間が経つ。
もう後がないと焦りを感じる。
すると余計に決まらない。
「もう諦めたら?」
連れ沿ってくれた友達からもそう言われる始末。
やはり諦めるしかないのだろうか…。
一つ溜息を吐く。
「誕生日プレゼントなんてどうだって良いじゃん」
つまらなそうに並べられた品物を手にする。
「でもさ…」
彼氏に渡す物くらいきちんとしておきたいと言う気持ちが先走っている。
「趣味が映画鑑賞でしょ?ムリムリ」
しかもラブロマと笑いと共に吐く。
「映画チケットって手もあるんだけど…」
友達の出した提案がボツになった案の一つだと言う。
何がボツ案だったのか…、それは。
「試写会で気になった奴は見ちゃってるのよ…」
試写会で見てない映画はラブロマ以外。
映画チケットを渡す必要はないのだ。
「…クソ忍足…」
折角の良い提案を捻り潰す様な忍足の行動に腹が立ち初めていた。
「…じゃあアクセは?」
妥当な案と言えばそうなる。
「アクセね…侑士の趣味に合うかな」
「自分から見た忍足のイメージとかなんとか言っときゃ平気よ」
半ば自棄になりながら科白を言い隣にあるアクセサリーショップに入った。
「いらっしゃいませ」
笑顔で店員が迎えた。
「ゆっくり決めなよ…あたし自分の見てるから」
本当に暇を持て余していたのだろう。
瞳を輝かせて店内を彷徨き始めた。
「どの様な物をお探しですか?」
店の真ん中にあるショーケース前に店員は立っている。
「あ…誕生日プレゼントを」
「彼氏さんにですか?」
質問に頷いて答えると店員はショーケースの中から幾つかアクセサリーを取り出す。
「此方はプレゼントに彼女さんから贈られる事が多いですよ」
出された物は指輪や腕輪やネックレス…多々ある。
「うーん…」
「ゆっくり決めて下さいね」
優しい声でそう言った。
それから数十分間悩みに悩んでいた。
指輪のサイズは解らないしネックレスに似合いそうな物はない。
…腕輪も余り。
ピアスはホールがないので問題外だ。
「指輪がな…」
「此方ですか?」
ショーケースの中にある細いリングが眼に映る。
「でもサイズが…」
確かに似合うと思うのだ。
さり気ない存在感が。
「サイズの調整はお買い上げ後も承ってますよ」
その言葉に嬉しそうに微笑んだ。
「侑士、おめでと」
沢山あるプレゼントの山を余所に本命からのプレゼントは小さな箱一つ。
「開けてええ?」
言うが早く袋を綺麗に開けて行く。
「これ…」
出て来たのはシルバーアクセサリーと呼ばれる物ではなく、本当に細いシルバーのリングだ。
「どの指用?」
尋ねられた言葉に一瞬戸惑ったが笑った。
「サイズ調整はしてくれるって」
だから好きな指で良いと。
「今日その店行けるか?」
サイズ調整に行くのを今日にしたいと要望が忍足から出る。
勿論良いと答えは決まっている。
「いらっしゃいませ」
昨日と同じ人が店の中にいる。
「昨日の…」
そこまで言うと店員は笑って昨日のショーケース前迄促した。
「あのリングのサイズ調整をお願いしたいんですけど」
「畏まりました」
店員は渡された箱から指輪を取り出す。
「どちらの指に為さいますか?」
丁寧な口調で忍足に問う。
「すんません、サイズとか解らんのですけど」
始めたから解っていたとでも言うかの様な顔で忍足を見た。
「では此方の方でサイズをお測り致します」
奥の方へ忍足を連れて指輪を持ち行ってしまう。
「お客様はどうぞ店内をご覧になってお過ごし下さい」
堅苦しい言葉を残していなくなってしまう。
「そんなに高くないの選んじゃったけど…」
細い分少しは他の物と比べて安くなっていた。
宝石類は一つもついていない。
「喜んでくれたかな…」
「あの、この指輪の小さいサイズ幾つか見せてくれません?」
「9号です」
「え?」
忍足の言葉が聞こえると直ぐに返事が帰って来る。
が、それは忍足の問い掛けに対する答えではない。
「彼女さんの薬指のサイズですよ」
一体何時調べたのか…寧ろ何故知っているのか。
店員は唯笑うだけだった。
「彼女さんの分もケースに入れますね」
準備してあったのだろう…。
9号のお揃いの指輪はショーケースとは別にしてあった。
「…ご存知ないですか?」
何を?
そう聞き返す前に店員は口を開いた。
「此処はカップルが良く来るんですよ、プレゼントを買いに」
の様に友達と来たり、一人で来たり。
様々な人達が来てはペアの何かを買いに来る。
それは絶対に等しい確率で。
「此処は唯の小さな宝石店ですが、中学生のカップルもいらっしゃいます」
の様に幾ら街を歩いて店を回っても見付からないプレゼントを見付けに。
「どうぞ」
忍足の指輪のサイズを調整して箱に戻す。
箱にはもう一つ小さな指輪。
「ありがとうございます」
「…お代は?」
忍足が思い出した様に財布を鞄から取り出す。
「此方の分は頂きません…私は幸せを売る仕事をしてますから」
忍足の表情を見て店員は更に笑みを深い物にした。
「お待たせしました」
手にしていたアクセサリーを置いて声が聞こえる方へ歩いた。
「すまんな待たせて」
忍足の言葉に首を横に振り笑顔を見せる。
「ほな…行こか」
店員に見送られて店を出た。
近くの喫茶店に入って一息吐いていると忍足が何かを言いたげにしている事に気付く。
「どうしたの?」
「あんな…指輪付けて」
買った指輪を箱に入れた儘にしている為忍足の指には何も付いていない。
「手と指輪貸して」
少しはにかみながら忍足から指輪を受け取った。
「……左手の何処?」
出された手が左手で中指かと思っていたが違った様だった。
「薬指に付けて」
放心状態に一瞬陥るの前に左手を近付けた。
「………」
無言でその手を取ってゆっくりと薬指へ指輪を持って行く。
「ありがとさん」
照れた顔を隠せずに下を向いている事しか出来ない。
「後な俺からもプレゼントのお返しあんねん」
何だろうと首を傾げると小さな箱を前に出した。
忍足の指輪が入っていた箱と同じ。
「これ、くれるの?」
出された指輪に戸惑いを隠せずにいる。
「付けて良い?」
忍足はそれを笑顔で返した。
「あれ?」
右手に付けてみてもしっくり来ない。
左手…薬指に丁度なサイズだった。
「良いの?」
恐る恐る尋ねると忍足は言った。
「左手の薬指に指輪をする意味って知っとる?」
常識と迄は言わないが女の子ならばその指輪の意味は知っている。
「結婚か婚約って意味になるくらいしか…」
「あんな、二つあんねん」
左手に指輪をする意味を忍足が知っていても可笑しくはない。
「一つは心臓からの血液が薬指には直接通っとるんよ」
「もう一つはな、右側に俺が付いてても左側は守れんやろ?せやから俺の代わりに守る為のもんや」
喫茶店の中は程良く暖かくて運ばれてから一口しか口を付けてないジュースが汗を掻いている。
小さくなりつつある氷がグラスに当たってカランと涼しげな音を立てた。
「の心臓も俺んやから」
クサい科白だと言うのに忍足は言葉を続けた。
「ちゃんと守ったるから、安心し?」
「侑士の心臓もあたしのだからね」
負けじと言い返すと忍足が小さく笑った事に気付いただろうか。
小説構成時間約2時間…。
携帯で登下校中の電車でカコカコと携帯で打ちました。
もう一本あったんですけど、何故かシリアスに走ってしまったので。
内にUP出来たらなぁと。
ですが、テストがあるのでテスト明けになってしまうと思います…。
忍足ハピバと言う訳ですが如何だったでしょうか。
かなり強引な所も多々ありますが…。
感想下さると嬉しいです。
フリー配布期間は今月末迄です。
2005/10/15