<手>








 

 

「朱夏」
帰宅途中で私を呼んだのは、金髪で紫暗の瞳。
街中を友達と別れて歩いていたら呼ばれた。
金髪のその人は男なのに女も悔しがる位の美人で、
当然町なんか歩いていたら男女構い無く振り返る。






そんな金髪美人が、私を呼んだから通行人は私の方に目を向ける。
金髪美人をモデルか芸能人とすると、私は只の一般市民。
私を見た後、あからさまに嫌そうな顔をする。
慣れたけどね…。







「何?三蔵」
少し離れた処から真直ぐ私に向って歩いて来る三蔵は、
擦れ違う人が見惚れる度に舌打ちをする。
………歩くのに邪魔なんだろう。
そんなのもお構いなしに私に向って来てくれるのは凄く嬉しい。
でも、慣れたとは言え周りの視線が痛い。









「帰りか?」
「そうだけど?」
「………一人なんだろ送ってやる」
ぶっきらぼうに私の腕を取って人込みを歩く三蔵は、
やっぱり周囲の注目の的だった。
私もある意味の注目の的で…。
視線が痛かったけど、三蔵は全く気にしていなかった。









三蔵は気にしなくても、私は気になった。
別に私は三蔵と付合ってる訳じゃない。
だから、三蔵が送ってくれると言っても「何で?」と言う風にしか取れない。
私は三蔵の事をトクベツに思ってると思う。
三蔵は只の知り合い程度でしか思ってない筈。
自分の気持ちを三蔵に伝え様とは思わない。
今のこの時間を私は三蔵と過ごしたいから。
だから……。











「おい、朱夏何考えてんだ」
不意に立ち止まった三蔵が私の顔を覗き込んでいるのに、
名前を呼ばれるまで気付かなかった。











「何でも無いよ?」
私の腕を掴んでいる三蔵の手に少しだけ力が篭る。
掴まれてる事は嬉しいけど、三蔵の気持ちが解らない。












「………何考えてた」
はぐらかした答えが気に食わなかったらしく、また強く腕を掴んだ。












「だから、何でも無い」
痛いくらいに掴む三蔵の手は冷たかった。
その冷たさに、何故か涙が出た。











「何、泣いてんだ」
手の冷たさとは逆に優しい声が聞えて、私は涙を抑える術をなくした。












「おい、何泣いてんだ」
何時に無く優しくて、それが哀しくなった。













「大…丈夫、だから……ほっといて」
嗚咽混じりの声は自分でも驚くほど弱々しかった。
三蔵の手を振り払おうとしても、強く掴まれた腕は振り払えなかった。














「何処が大丈夫なんだ」
そりゃ御尤も何だけど。
でも、ほっといてよ。














「朱夏?」
何も答えないで俯く私に三蔵は顔を覗き込んで名前を呼ぶ。
耳に残る暖かな声は、私を苦しめた。













「三蔵、手…離して」
ずっと喋らなかった私は如何しても三蔵から離れたかった。
早く離れないと、三蔵との距離を縮めたくなってしまうから。
縮めてはいけない距離を、縮め様と口を開いてしまうから。














「…離したら、何処へ行くつもりだ」
心を読まれたかのように、三蔵は腕を掴んでいた力を少しだけ緩める。
きっと、逃げたいのなら好きにしろ、とでも言いたいんだろう。
振り解いて逃げ様とすれば、逃げられたのに。
私は、振り解く事が出来なかった。














「……三蔵…」
振り解けなかった事に対しての自己嫌悪か、三蔵が解らないのか、
何なのか解らないまま、私は三蔵の肩を借りて泣いた。

























ココが人通りの多いトコじゃなくて良かった。
そう思ったのは、少し泣き止みそうになった頃。
私が泣き出す前に三蔵が手を引いて、町外れまで連れて来たから。
だから私が泣いてるのを知っているのは三蔵だけ。
ホントは三蔵にも知られたくなかったんだけど。
如何しても後から後から流れて来る涙が抑えきれなくて。
気付いたら泣いてた。












泣き止まない私を黙って支えてる大きな肩は、
何時の間にか胸になってて、私は広い広い胸にすっぽりと収まってた。
背中に回される腕は、強く私を抱き締めた。
































言葉は無くとも、背中に回された腕だけで私は十分だから。
何も言わないで。
何も伝えない。
































今だけで良いから、私だけを抱き締めて。






















ねぇ三蔵………。













 

 

 

さてさて如何したもんだい?
イヤ聞かれても困るけどさ。
私が何をしたかったのかさっぱりじゃん。
これは夢?!
答えられない自分が悲しい。
これ結構前にリクエストっポイので書いたヤツのボツネタ。
んなモンUPするなよな…
でも、UPしなきゃ辛かったんだもん!!
ってな事でUPです。
こう言うのって辛いんじゃないですか?
私こう言うの書くの好きなんですけどね。
好きじゃないと書かないし(爆
何故か改行して長く見せ様としていた事を思い出す…

私1人突っ込みし過ぎだし。

感想聞かせてくれると、管理人続きっぽいの書くかもです。
(書かないと思うけど…カキコないし………………。