<See>





















「跡部!辞書貸して」

隣のクラスのちゃんは英語の辞書を借りに良くこのクラスに来る。
でも、借りに来るのは俺にじゃなくてあとべ。

「またかよ…好い加減持って来いよ」

あとべは何でもないって顔しながらもちゃんとちゃんに辞書を貸してる。
普段のあとべなら、絶対に貸さないのに。
ちゃんには貸す。
それは、ちゃんがテニス部の正レギュマネージャーだから?
だってあとべ、ちゃんじゃなくて彼女いるもんね。
ちゃんだって知ってるのに、何で態々あとべに借りるの?
俺もいるよ?
ちゃんの目にはあとべしか映ってないんだよね。
俺はちゃんの目に映らないんだよね。
でも、あとべの目にもちゃんは映ってないよね?
…何で一方通行なんだろう。
せめて、あとべの目にちゃんが映ってれば。
そしたら、俺だって少しは救われたのに…。
俺のこの気持ちは何処に行けば良いんだろ。
何処に行けば消えるんだろ。





















ちゃんはあとべ好きなの?」

部活の時間は好き。
あとべだけじゃなくて他の人も映っちゃうけど、俺もちゃんの視界に入れるから。
他の正レギュラーと同じ扱いでも良いよ?
だから、俺の事にも気付いて?

「…ジロー君」

ずっと見てたんだよ?
あとべも知らない事とか、あとべしか見てないちゃんとか。
ずっとちゃんとその向こうにあるあとべの背中を見て来たんだから。

「あとべ、ちゃんの気持ちに気付いてないよ?」

こう言ったからってちゃんが俺を見てくれる筈がない。
俺に気付いてくれない。
けど、悔しいよ俺。
如何やったら気付いてくれるの?
見てくれるの?
俺を視界に入れてくれるの?

「解ってるよ…」

こうやって追い詰めても変わらない。
ちゃんのあとべへの気持ちは変わらない。
変わるのは、きっと俺に対しての気持ち。

























酷い奴だって思う位。
それでも良いよ。
中途半端な気持ちで傍にいられても、俺は何も出来なくて悔しいだけだもん。
どれだけ臆病者って言われても思われても大丈夫。
俺の事視界に入れてくれないなら。




































好き過ぎて、如何して良いか解らないよ。







































忘れられる楽なんだろうな…。
如何して俺って人の気持ちに敏感なんだろう。
気付いたのは多分ちゃん自身よりも先だと思う。
ちゃんよりもずっと先で、あとべに彼女が出来るよりも前。
ずっと見つめる視線が気になった。
その先には必ずあとべがいたんだよね。
…俺って、ちゃんがあとべを好きになる前からちゃん好きだったんだ。
何か面白いね……。
皆が皆追い掛けて…いたちごっこって言うの?











































馬鹿みたい。









































ちゃん、あとべ見てるだけで良いの?」

如何して…如何して背中押そうとするんだろ。

「でも、彼女いるし」

あぁ…そうやってちゃんが振られるの待ってるんだ。
そしたら、弱ってるちゃんを自分の物に出来ると思ってるんだ。
俺、結構ヤな奴だね。
でもそれ位しても良いって思える位ちゃん好きなんだ。

「ダメ元でも言ってみなよ?」

ズキリと胸が痛む。
これは罪の意識って奴かな。




























「ねぇねぇ、あとべ」

珍しく教室で眠気が襲って来なかった俺は良い事を思い付いてあとべの所へ向かった。
あとべは基本的に俺に優しいから、読んでた本に栞を挟んで机に置いた。
俺が起きてる事が珍しいからってのもありそう。

「何だジロー」

「あのねー、英語教えて欲しいんだ」

ニコニコ笑うのは得意な方。
だって、自分の底の方にある本性を見られない為の盾でしょ?
俺は何時だってフル活動だよ。
あとべのインサイトだって、こんな時には使わないだろうしね。

「…英語?」

びっくりした顔してるあとべに紙とペンを渡した。

「あのね、これなんだけど訳して」

もう既に紙には言葉が書いてあって、それを訳して貰うつもりだった。

「…良いぜ」

「あ、後ね振り仮名もヨロシク」

英語何て読める筈ないじゃん。
訳して貰っても解んないアルファベットが並んでるだけだし。

「解った、放課後までには出来る」

流石あとべ。
まぁ、あとべの得意分野だしね。

























ちゃん?」

放課後にボーっと寝る場所探してふらふらしてたら、ちゃんがいた。
声掛けるとびっくりした様に肩を震わせた。

「ジロー君…」

あぁ、やっぱり。

「何で泣いてるの?」

思った通りちゃん泣いてた。
その原因も解ってる。
けど、俺の物になって貰わないと。

「……あとべ?」

隣に座って小さく聞くとちゃんは何も答えなかった。
でもそれは肯定で、ちゃんはまた少し涙を流した。

ちゃん、今日は胸貸したげる」

何時も膝貸して貰ってるからね。
そう言って抱締めると一瞬ビクッってなったけど、大きな抵抗なんてしなかった。






























此の儘堕ちて来れば良いんだ。
ちゃんが此の儘俺の所に来れば良い。
どんな事したって平気。
ちゃんが俺の事意識して見てくれれば良い。





































「Since all of me are passed, give me all instead, and love only me.」






















「The heart over there is my thing. It is in only my thing about your world.」




























何度だって言うよ。
だからお願い、俺を見て。



































久々ジロちゃんの夢です。
が、黒いです!!
素敵悪魔です☆
今日は参謀と言われまくったので、参謀!柳だと思ったんですが、彼のキャラがいまいち解らなくて(汗
ジロちゃんにしてみました。
ホントはもっと明るい感じの話になる予定だったのに…!!
たまには良いよね??

2006/3/17


上の英文の訳。

僕の全てを渡すから代わりに僕に全てを与えて、僕だけを愛して。
貴方の心は僕の物。君の世界を僕だけの物に。