<年上>






俺な、好きな子おんねん。
ファンの子も跡部程じゃないけどおる。
ファンに告られても嬉しないわ。
誰にも言うてへんねん。
ダブルスパートナーにもやで。
今迄結構遊んでた俺が、珍しく真面目や。
























さん」

部活帰りにコンビニ寄って今日の夕食買うんが俺の日課。
それ繰り返してたらコンビニの定員さんと仲良うなって…それがさんやねん。

「忍足君、野菜は?」

コンビニの弁当を適当に籠に入れてレジに持って行くと野菜がないと言われた。

「…まぁええわ」

東京に来たのは俺1人。
もう此の生活にも大分慣れたし部活後に飯作る気にならんからな。

「良くないって…今日8時上がりだから作ってあげようか?」

控え目に言うのはやっぱり年上だから出来るんやろな。
タメの子じゃ絶対押し掛けて来るに決まっとる。

「じゃあ甘えるわ、迎えに来るから」

1人でも良いと言ってたけど、女性1人は危ない。
それに俺の家を知らない訳やし。

































「お待たせ、忍足君」

何時も見るのはコンビニの制服。
私服を見れるんは初めてや。
シンプルに軽装を選んで着ていたけどお洒落で…。

「夕食食べた?」

さっきのコンビニ弁当をどうしたかって事やろね。

「未だやで、さん待っててん」

さんが仕事してんやで?
俺が先食べる筈ないやろ。

「じゃあ、作っちゃっても良い?」

コンビニから家迄そう遠くはないし、その先にスーパーもある。

「材料とかある?」

最近部活が忙しくて自分で料理作ってへんわ。
多分冷蔵庫の物じゃ何も作れんわ。

「米は研いどいたけど材料はないわ」

「じゃスーパー寄ろうか」

嫌な顔一つせんとスーパーに向かう。
何か嬉しいわ。

「1人暮らしって大変じゃない?」

こんなにさんと話したのは初めてや。
さんの事知るんも初めてや。

「あたしも1人暮らしだからさ」

「そうなん?」

知らないさんを知る事がこんなにも楽しいなんて。

「高校入ってからは1人暮らしだよ」

料理をするのには慣れたと言ってたけど、1人で食べるんは寂しい。
そんな事言うたら期待してまうやん。

「じゃお会計して来よ?」

誰かと食べるんが嬉しいんかニコニコしてる。
あかん…めっちゃかわええ。



















帰り道に嫌いな食べ物だとか他愛のない話したをして楽しかったわ。

















「あたし、忍足君にお弁当作ろうか?」

毎朝自分の弁当作る序でに。

「せやけど、朝早いし悪いわ」

作って欲しいわ。
ホンマは。
部活で朝早い俺の為に時間を作って貰うんは悪い。

「大丈夫、氷帝の中等部でしょ?明日持ってくから」

学校が近いって事やろか。
気にしないでええって言うてたけど。

「はい、出来た」

米も炊けててタイミング良く夕飯が出来た。

「めっちゃええ匂いやわ」

運ばれて来る料理は綺麗で誰かに作って貰うのも久し振りで何や嬉しなった。

「口に合うか解んないけど」

照れくさそうに俺に箸を渡す。

「なぁ、一緒に食べよ」

割り箸だったけどさんに箸渡して一緒に食べた。

「頂きます」

2人とも誰かと食べる事が久し振りで何だか照れた。

さん料理上手やね、めっちゃ美味いわ」

お世辞やなくてホンマに。

「良かったぁ、作るって自分で言ったのに不味かったらって心配してたの」

俺の顔を見て安心したのか嬉しそうに笑た。


























「明日お弁当届けるけど朝食ちゃんと取ってね」

一緒に食べて片付けも一緒にやって…何や夫婦みたいやん。

「じゃああたし帰るね」

自分の荷物を纏めて持って玄関へ向かった。

「送るわ」

平気だとまた言うてたけど、夜遅いんやって納得させて送ってった。



















料理上手やし気遣いもええし、仕草がかわええ。
明日の弁当楽しみや。


















「忍足君」

昼休みに俺のクラスへ来たんはさん。
約束通り弁当持って来てくれた。

さん…それ」

さんの着ていた制服は氷帝の高等部の物。

「驚いた?」

確かに中高一貫の学校やけど、まさか…。

「中等部って滅多に来ないから」

一貫と言っても敷地が先ず違う為関わりがない。
一部生徒は出入りするらしい。

「驚いたわ…さん氷帝の生徒やったん?」

俺の驚いた顔に満足したのか弁当を渡すと笑た。

「へぇ此が侑ちゃんの」

「ふーん」

「忍足激ダサだな」

「可愛い人じゃないですか」

「良いじゃねぇか、なぁ樺地」

「ウス」

さんの後ろに立つ一番合わせたくない奴らが…。
さんは振り返ると何の事か解らず慌ててた。

「お前ら困らせんなや」

さんの手を引いてよろけた所を後ろから支えた。
俺より大分ちっさい身体は簡単によろける。

「…あの…」

さんを挟んで睨み合いを続ける俺等に困った顔をしてた。

「なかなかの美人じゃねぇか」

さんの前に出て来てちゃっかり顎を抑えて上を向かせて…跡部め!

「離しい、跡部」

さんをもっと自分に近付けて跡部から手を離させた。
さんに触るなんて有り得へん…許さへんよ。

「弁当ありがとさん、行こか」

未だ騒いでいる奴等を置いてさんを連れて教室を出た。
さんは奴等に向かってお辞儀をしてた。
せんでええっちゅうに。

「忍足君って凄い有名なのね」

中等部に来るのは久し振りで校舎を彷徨いているとタローが俺のクラスを教えたらしい。
タローと知り合いなんが不安や…。

「他の人も忍足君と跡部君の話ししてたし」

ニコニコと笑う姿は昨日と変わりなかった。

「好きやねん」

「………」

無反応…言うたらあかんかった?
せやけどさんが好きやねん。
此は言っときたいんや。

「ありがとう」

てっきり返事をくれるんやと思っとったんやけど。

「…返事教えて」

「好き」

今迄見た中で一番の笑顔や。
可愛くて可愛くて…抱き締めとうなった。


ポフッ


「えへへ」

見透かしたかの様にさんが自分から抱きついて来た。
顔をあげて微笑むさんはやっぱり年上だった。
笑顔は無邪気で幼いけど、俺が思てる事気付いてんねん。

「忍足君は?」

何の事か解らんかったけど抱き締めとらん事に不満だと気付いた。
ゆっくり背中に腕を回すと髪からさんの匂いがした。
それから無邪気に笑うさんは俺を抱き締めて優しく微笑んだ。


















何だか甘くなりましたね〜。
たまには年上設定なんて如何でしょう?
何だか跡部小説ばかりになって来たのでたまには忍足を更新です。
2005/09/22