<爪>







パチン…パチン……








爪を切る音がする。

「な〜にしてんの?」

後ろから覗き込む様にして爪を切る相手の顔を見る。

「何って見れば解るでしょ」

爪を切るのに没頭しているのか、振り向きもせずに答える。

「つまんないし暇」

その一言に手を止め振り向く。

「切り終わってからね」

今は集中させて欲しい…と言った所だろう。

「…何で切っちゃう訳?」

前迄は爪を伸ばすのが好きだった彼女が急に切り出した事に気付き疑問を問う。

「……さぁ?」

意味ありげに口の端を上げて笑う。




































、教えてよ」

何故か無性に気になってしまった。
爪の手入れを怠らないと迄は行かないがマメに手入れはしていた。
マニキュアもペディキュアも好きで一時期はネイルに嵌っていた。
爪も結構長めで綺麗に伸ばしていたのに…だ。

「何で?」

全て切り終わって爪切りをしまう。
そして戻って来ると笑った。

「痛いでしょ、悟浄」

そう言われてもいまいち何を言っているのか解らない様だった。

「何が…?」

首を傾げるのを横眼で見て笑った。

「爪は短くて良いの。長くしたいなら付け爪でもするし」

嬉しそうな顔をして短くなった自分の爪を見た。

「深爪はしてねぇよな」

「ピアニストはこれ位の長さよ」

切ったばかりで指先に違和感を感じながらそれを眼の前に差し出す。

「ピアニストじゃねぇだろ………短くなったな」

でしょう…とでも言いたそうな顔をして口を開いた。

「痛いでしょ、背中」

あぁ…やっと理解して今度は逆に悟浄が口の端を上げた。

「気にしてんの?…それとも恥ずかしいの?」

ニヒルに笑う彼を見て言い返す言葉が見付からない。

「あ、両方?」

これが茶化していると解りながらもペースに嵌ってしまう。

「俺は嬉しいけどな、所有物って感じじゃん?」

何時もより低いテノールの声で耳元に呟く。
慌てて耳に手を当てて離れる。

「ちょっ……!」

もうすっかり嵌ってしまったペースからは逃れられない。




































背中には無数に残る爪痕。
何度も同じ場所に立てられた爪は消え難くなった痕を残す。

「だから切ったんだよ…バーカ」

小さく囁く言葉は誰に聞かれる事なく消えて行く。
隣で眠る彼に掠める様にキスをした。
爪痕の代わりに残した痕に触れて…。









































うーん久し振りの最遊記ですけど、短いですね…。
ふと思いついて書いたから大分内容は薄いし。
スランプです…。
感想くれるとうれしいなぁ…なんて。
2005/10/22