<梅雨>










「雨…憂鬱な気分になる〜」

雨が振ると練習メニューが変更される。
雨用の練習メニュー…所謂基礎トレだ。

「ジロー、雨でテニス出来ないのは皆一緒でしょ」

ふてくされて部室で愚痴を零すジローは湿気で蒸し暑いのか、制服のシャツの首元をパタパタさせている。
確かに今日は雨で憂鬱になる天気だ。
テニスは出来ないし蒸し暑い。
そんな中で基礎トレをしたくない…と言うのがジローの言い分だ。

「だけど〜、動いたら汗掻くし」

部室にあるソファの上に座っていたジローは、これ以上何を言っても動かないと言う意思表示だろうか。
ソファの上で寝転んでしまった。

「ちょっと、寝ちゃダメだよ?」

基本的にジローに優しい跡部がそこまで怒る筈はない。
だから強制こそはしない。
ソファの方を向く様に机に着き、作業を始める。

「…ちゃん、何してんの??」

寝転んだ儘、顔を少し上げて見る。

「んー?部誌とか個人データの整理かな」

ジローの方は見ないで答えた事が嫌だったのか、少し頬を膨らませた。
がそれに気付く気配はない。

「……ちゃん?」

半覚醒なジローは喋っていないと自分から話掛けると言う。

「ん?何ジロー」

それでもやっぱり顔を向けてはくれない。

「…つまんなーい」

遂に痺れを切らしたのかジローは愛用のひつじ枕を抱え込んで真逆を向いてしまう。

「ジロー、今手離せないの」

仕事をしているのだ、とそう言ってもジローは聞く耳を持たない。
軽く溜息を吐いて、は荷物を持って立ち上がる。

「……ヒマ」

ジローの寝転んでるソファに腰を下ろし、前にある机に荷物を広げる。

「手伝ってくれる?」

「それはムリ」

間髪入れずに拒否。
予期していた事だったのだろう。
そう言われても怒るつもりもないらしく、作業を続ける。

「邪魔しないから…喋っても良い?」

そのセリフには振り返り微笑んだ。
そして仕事を再び始めた。

「雨はね、ジメジメするしテニス出来ないし嫌い」

「それにね屋上で昼寝も出来ないし」

「でも、ちゃんと一緒にいられるから好き〜」

「……ジロー、恥ずかしい事言うね」

ピタッと手を止めて振り返る。

「えへへ〜」

照れ笑いなのかジローの顔が気持ち赤い様に見えた。

「跡部とテニスしてるのとあたしとこうして喋るの、どっちが好き?」

一瞬、驚いて目を見開いてを見た。

「…テニス」

「なら上手くなる様に練習行きなよ?」

優しく笑ってみせた。
の質問は誘導尋問に似ていた。
雨で気が滅入るからと言って、部活を休んで良いハズがない。

「…うん!」

本当に楽しそうな笑顔を向けてジローは起き上がる。

「行ってらっしゃい」

「行って来ま〜す」

軽やかな声と共に素早くジャージに着替え去って行き、部室はあっと言う間に静かになった。
は苦笑したまま出て行ったドアを見つめている。

「未だテニスが1番か…」

複雑そうな表情を浮かべて髪を掻き上げた。







そこにはもう誰もいない空間が広がってるだけ。









久々な小説が…小説じゃない!!
解ってますよ、解ってるんです…でも出来ないの〜(泣
しかもね、最初の段階でジローの髪の毛とかについても幾つか触れて、ネタにしようと思ってたのに。
掠りもしなかったわ…。
次は絶対!!
2006/06/17